【INTERVIEW】アスリート陶芸家 山田翔太さんに伺う、感性・生き方のセンスの磨き方

【INTERVIEW】アスリート陶芸家 山田翔太さんに伺う、感性・生き方のセンスの磨き方

(Photo by Waki Hamatsu)

日々の忙しさやストレス、情報過多により、自分自身の心と体のバランスがとれず、何となくの不調や将来への漠然とした不安を抱えながら過ごしている現代人は多いのではないでしょうか?

陶芸家・茶人として国内のみならず海外でも個展・茶会を開催し、トレイルランやトライアスロンを嗜むアスリートでもあり、ルルレモンのアンバサダー、会社員としての一面も持ち、マルチに活躍されている、アスリート陶芸家の山田翔太さんに【感性を磨く、生き方のセンス】をテーマに、感性を研ぎ澄まし、自分自身を整え、活かすためのヒントを伺いました。

「丁寧な暮らし」は、きっかけさえあれば意外と簡単に始められる

山田さん:「ところで、これは陶芸家として純粋に聞いてみたいんですが、器を普段選ぶ時、何を意識して選んでいますか?」

編集部:「えーっと・・・・、そう言われてみれば、あまりこだわりなかったです。シンプルなものを選ぶようにはしてるかもしれないけど・・・。」

山田さん:「僕は家にある器の9割くらいは自分で作ったものですが、それ以外は作家さんが作った1点ものの器を選ぶようにしています。セレクトショップなどでいくら良い器が並んでいたとしても、名前だけを見て愛着が湧く自信がないので、基本的には作り手の顔が見えない器は買いませんね。

個展に行って、直接その作家さんと会話をして、思い入れがあって購入した器は、使うたびにその作家さんの顔が浮かんできて、使うのが楽しみになるし、器の扱い方も変わってきて、食器を洗う時も集中していないと割ってしまうので、神経を使うし、1つ1つ丁寧に洗う。まさにマインドフルな時間ですね。」

編集部:「なるほど。確かに今は100円ショップやIKEA、無印などでもオシャレな器を安く購入することはできますが、割れてもまたすぐ買えるとなると、扱いも雑になって、1つ1つ大切に使わないかもしれません。」

山田さん:「どんな国にいたとしても365日、器を使わない日はないし、器を持っていない人はいないと思います。例えば予算を決めて、自分の家の中の食器をこだわりのあるものに総取替えすることで、必然的にモノの扱い方が丁寧になり、1つのものを大切にするサスティナブルな感覚に目を向けられるようになるし、盛り付ける料理も変わって、食事も美味しくなります。何気ない日常が特別に感じられるし、日常が変わると人生も変わってくるし、日常も豊かになります。

編集部:「なるほど。丁寧な暮らしって、何か特別をしたりと難しく考えがちですが、きっかけさえあればいつでも始められるのですね。」

2021年1月に開催された、山田さんの個展の様子

日本の美意識・マインドフルネスにも通じる「茶の湯」の魅力

編集部:「山田さんは国内で様々な分野で活躍するトップアスリートを招いたお茶会のイベントに参画するだけでなく、フランスなど海外でもお茶会を開催したり、登山した後に山頂で抹茶を点てて、よく自然の中での『野点(のだて)』を楽しまれていて素敵だなと思うのですが、お茶を始められたのはここ数年のことだというのは本当ですか?」

山田さん:「陶芸は高校生の頃から続けていますが、お茶はまだ始めてから3年くらい。実はフランスで初めて個展とお茶会を開催した時は、まだお茶を始めて3ヶ月くらいの頃(笑)。

自分の器を購入して下さったお客様から『あなたの器は抹茶を点てやすい』と言われたこと、遠州流という流派のお茶の家元で、ラクロスの日本代表としても活躍していた大学時代の後輩との出会いがきっかけでお茶の世界に足を踏み入れたのですが、ただ単にお茶のことだけ知っていれば良いのではなく、『物を大切にする心』だったり、生花や掛け軸、着物などの様々な日本文化に、気付けばすっかり『茶の湯の世界』の虜になりました。

僕は毎朝抹茶を点てるのが習慣なのですが、動作や抹茶の味などを通して、その日がどんなコンディションかを内省する時間にもなるので、まさにマインドフルネスな時間ですね。

また、自然と一体化しながら飲む一杯はすごく美味しいし、色んな景色のところでお茶を飲みたいし、その感動を誰かに一緒に味わってもらいたいという想いもあり、『野点』も定期的に行っています。軽量化されて割れにくいアウトドア用の茶道具セットなどもありますが、本物の陶器の方が美味しいお茶が飲めるので、毎回荷物は重いですが、茶器を背負って登山やトレイルランに臨んでいます(笑)。」

編集部:「まさにアスリートですね!恐らく茶人の中でも、アスリートの中でも、山田さんと同じようなことができる人は他にいないのではないでしょうか?(笑)」

山田さん:「多分そうだと思います。最近はコロナで大会が少ないのもありますが、陶芸よりも、アスリートよりも、茶の湯が自分の中では最も目を向けている分野です。」

富士山の登頂での野点の様子

編集部:「抹茶には抗酸化作用やリラックス作用などの健康効果もありますし、そこまで量を多く飲まないので、カフェインを摂り過ぎてしまうこともないと思うのですが、日本にはせっかく『抹茶』という文化がありながらも、『コーヒー』の方が主流になりつつあるように感じますが、それについてどう思われますか?」

山田さん:「器に抹茶を入れて、点てるだけだから、手間的にはコーヒーとさほど変わらないと思います。ただ、コーヒーだと高い豆を使えば、誰でも比較的美味しいコーヒーが淹れられますが、抹茶の場合は同じ抹茶・茶筅を使っても、点てる人によってもダマになったり、分離したり、苦くなったり、味が変わるので、高い抹茶を使ったからといって美味しくなるとは限らないところが、日常に定着しない原因の1つではないか?と思っています。

美味しい抹茶を点てるには技術を高めていく必要がありますが、だからといって茶道教室へ行っても、抹茶を点てるまでの流れと、飲むまでの作法の習得がメインなので、美味しい抹茶の点て方を学ぶ機会はほとんどないに等しいのが現状です。」

編集部:「確かに以前、山田さんが点てた抹茶と、自分で点てた抹茶を飲み比べてみたら、全然味が違いました!自分で点てた抹茶は若干分離したり、ダマになって苦味がありましたが、山田さんが点てた抹茶はすごくクリーミーで、美味しかったです。」

山田さん:「ありがとうございます。これまでもイベントとして『抹茶の点て方講座』行ったり、先日もフランスとオンラインで繋いで、茶の湯・抹茶の点て方の講座の後、1人ひとり画面で点て方をチェックする茶会を行いましたが、全員が満足いくレベルまで持っていくのは難しいのが現状で。

お茶碗を変えるのか?茶筅を変えるのか?なども試行錯誤しながら、抹茶を美味しく点てられるメソッドを伝えられる手段はないかを、陶芸家・茶人として模索しています。」

美味しい抹茶の条件の1つが、きめ細やかな泡立ち

自分自身をクリアリングし、「ととのえる」ための習慣・心がけ

編集部:「山田さんはアスリートでもあり、アーティストでもあるので、一般的な方よりも『自分自身の感覚』に対して非常に敏感だと思いますが、何か普段から習慣にしていたり、意識していることはありますか?」

山田さん:「心の豊かさ・心の状態が作品にも投影されるので、自分自身をクリアリングして、自分自身とつながるために、現在アーユルヴェーダを学んでいるMOTHERが行っている、毎朝6時からの瞑想・呼吸法のオンラインクラスに参加して、30分間瞑想することを習慣にしています。始める2ヶ月前までは、朝8時か9時くらいに起きていましたし、2〜3年前は自分自身が全然クリアリングされていなくて、3分間瞑想しただけでも眠ってしまったり、常に疲れていました。

今では朝に良い時間を過ごすことで、1日が変わる心地良さにハマってしまい、欠かすことができなくなりました。毎朝瞑想が終わった後には、抹茶を点てることも欠かせません。

オンラインだと、画面オフにしてパジャマなどで参加することもできますが、規律を整えるためにも、『どんな状況下でも必ず画面オンで参加する』ことをマイルールにしています。習慣化って難しいですが、誰かと一緒に取り組んだり、1度ループにハマると継続できると思います悪い習慣にハマると続いてしまうけれど、きっかけや実体験さえあれば、良い習慣にも同じことが言えると思うんです。

編集部:「現代人は常に忙しく、情報も身の回りに溢れているからこそ、周りに目が向きがちだったり、他人と比較しがちな方は多いですが、『自分自身に目を向けたり、つながる時間』こそが今本当に求められているのでしょうね。」

山田さん:「まさにその通りで、現代人は『動く』ことが得意な人は多いけれど、あえて「空・静」の時間を持つことが大切だと思います。特に朝にそういう時間を持つことで、自分自身の潜在意識とも繋がりやすいし、インスピレーションも得られるはず。1日で劇的に変わるものではないですが、少しずつ変化が自分自身にも、家族や周りにも及ぶと思います。」

アートとサイエンスの融合。アーティストでもあり、会社員でもあるからこそ得られたバランス感覚

編集部:「山田さんは普段、作品を作るにあたって、インスピレーションはどこから得ていますか?」

山田さん:「インスピレーションと言えるか分かりませんが、『なるべく思考を使わない』ことと、『過去のものは追いかけない』ことですかね。商業的なデザインだったら頭で考える必要があると思いますが、頭で考えて作ったものは、自分の頭の中の想定範囲内のものしか作れないので、全然面白くないんです。論理的に考えすぎると、自分自身のエゴなども入ってしまうので、なるべく無駄なもの・思考を削って、自分自身をクリアリングして感性を研ぎ澄ませて、身を委ねるような感覚で作品作りをしています。窯を開けるまで何を作ったのかすら忘れてしまうことも多いですが、そういう時ほど良い作品ができるので、まさに宝探しのような感覚を楽しんでします。」

編集部:「考えるよりも、感じること。すごく難しいし、私自身苦手な分野でもあります。」

山田さん:「そういう方は多いと思います。アートやモノづくりの世界では、ある意味正解がないので、ふわふわ漂っていることが楽しくて、心地良くて、それが良いのですが、会社員としてはそういった部分は出せないですよね。僕自身週1〜2日くらいは会社員としても働いていますが、会社では感覚的なふわっとし過ぎているよりは、売り上げはどうだとか数字・論理的な思考が必要なので、思考の切り替え・バランス感覚を大切にしています。」

編集部:「そのバランス感覚って難しいですよね。」

山田さん:「僕が今学んでいるアーユルヴェーダも、知識的な部分ももちろんありますが、5000年前の人々が実践していたアーユルヴェーダというのは、恐らく感覚的な部分の方が占める割合の方が大きかったのではないかと思うし、現代人は思考を使わないといけない部分も多いので、当時の人々と全く同じようにアーユルヴェーダを実践するのは難しいでしょう。それにアーユルヴェーダに限らず、現代では目に見えるもの・資本主義的なものにばかり注目されがちですが、本来は目に見えないものの方が世の中の多くの割合を占めていると思います。

思考を使う世界と感覚を使う世界、両方を使えることで、地に足が着き過ぎず、宙にふわふわし過ぎず、ちょうど良いバランスが取れるし、日常の中にアーユルヴェーダ的な感覚を取り入れることで、人生を楽に生きられるようになると思っています。そのバランス感覚を得るためには、両方の分野に身を置いたり、経験するのが手っ取り早いと考えています。」

編集部:「まさに『ホリスティック』ですし、『アートとサイエンスの融合』と言えますね。」

山田さん:「僕はアスリート茶会を開催したり、ルルレモンのアンバサダーとしても、アスリートの方と関わる機会が多いのですが、トップアスリートであればあるほど感覚的な部分を大事にしていて、アートやお茶だったり、競技から遠い分野のものに触れることで『いかに脳に新しい刺激を入れ、その刺激から生まれた感性を自分たちの競技に生かすか』を意識することで、競技にも良い影響を受けている方が多い印象を受けます。

11月に広尾のEAT PLAY WORKSでも古典・茶会を開催したのですが、経営者でもお茶・陶芸に興味を持つ人が多かったです。物質的なものに限界を感じて、『本当のこれからの幸せってなんだろう?』という壁にぶつかった時に、見つめ直すきっかけの1つがアートだったり器だったり、お茶だったりするのではないか?と思っています。」

2021年11月に広尾EAT PLAY WORKSで開催された、お茶会での一場面

「アスリート陶芸家」としての使命・今後のチャレンジ

編集部:「『アスリート陶芸家』として、今後のビジョンなどはありますか?」

山田さん:「確実に器の方が自分自身の寿命よりも長いわけで、孫の世代にもかっこいいと思ってもらえる本当に良い作品を作るのが、作り手としての使命だと思っています。1つのものを400年残そうと思うと、自分の孫がそのものを良いと思って、使い続けて、伝え続けていくことが5〜6ループくらい続かないと、後世に残すのは難しいんです。自分の子供なら『親が大切に使っていたものだから』と大切に保管することはあるかもしれないけれど、大量生産されたものが世の中にたくさんあるし、現在は核家族化でおじいちゃんがそのものを使っている姿も見ないまま遺品整理することになると思うので、孫が『おじいちゃんの作った器かっこいい』と思って大切に残す確率はものすごく少ない。

古典的なものを作るだけでなく、そこにはストーリーも必要で。心が豊かでないと、作品に反映されないし、苦しみながら作ったものはそういった強いエネルギーが反映されてしまう。もちろん陰陽どちらも良い部分はありますが、自分が作りたいのは『人を元気にするような、陽のエネルギーの器』。陶芸家の名家として評価されたり、人間国宝になることよりも、『自分の器を使うことで、人の意識を変容させたり、生活をより良くする』ことをミッションに掲げています。作品は年間200〜300個作るのが限界ですが、ちゃんと必要な人に想いを伝えて、1つ1つ丁寧に届けていきたいし、陶芸家としてお茶や器の魅力を広げていきたいです。

来年2022年1月25日から銀座で個展を開催する予定で、状況が許せば、その後はフランス・マルセイユに飛んで、個展・お茶会を開催したり、フランスの山に登って野点を楽しみたいです。

また、『風の時代』と言われるように、目に見えるものだけでなく、目に見えない部分も、今後はホリスティックに共存していく時代になっていくと思います。思考を使う世界、感覚的な世界。両方を使いこなせると良いし、もっともっと自分自身も探求していきたいし、それらが融合した世界を、陶芸家の立場から作っていきたいです。

女性は感覚的なものに敏感な方が多いですが、男性は女性に比べてアンテナを立てていなかったり、感性に疎い人が多く、気付かないうちに体を壊してしまうことも少なくありません。今アーユルヴェーダを学んでいるスクール『MOTHER』ならぬ、『FATHER』ではありませんが(笑)、アスリート陶芸家としてアーユルヴェーダのエッセンスを入れ込んだ作品づくり・発信を通して、原理主義だけでなく、もっとこうすると楽になるよとか、人生の本質的な部分に気づいてもらうきっかけを作っていきたいし、伝えていきたいと思っています。」

編集部:「素敵なお話!心が磨かれるような素晴らしいお話をたくさん聞かせて頂き、ありがとうございました!個展の開催も今から楽しみにしています。」

山梨県道志村にある養老の森で開催された「ツナグの森茶会」での一場面

※こちらの記事は、2021年10月3日に開催したインスタライブを元に執筆しております。アーカイブはこちらよりご覧頂けます。

PROFILE
山田翔太(Shota Yamada)
アスリート陶芸家、lululemonアンバサダー

1988年千葉県生まれ 
高校で陶芸を始め、東京都内の共同工房にて作陶
10年間のラグビー経験をいかし、現在はトライアスロン選手として大会に出場
会社員として働きながら、 うつわにアスリートの美意識を取り入れた ”Athlete Ceramist”として 東京とフランスを拠点に活動中

Web site:https://ya-ma-shou.com/
Instagram:https://www.instagram.com/shotayamada14/

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この記事を書いた人
佐々木 貴美
薬に頼りすぎず、漢方・ハーブ・アロマなどの自然療法、予防医学、栄養学、美容などもバランス良く取り入れ、「体の内側から健康で美しく、ハッピーに」をコンセプトに発信する、ホリスティック薬剤師。W holistic pharmacy顧問。「オンライン優しい漢方」漢方薬剤師。電子書籍「健康美を手に入れて自分を輝かせるための15の処方箋」著者。デッドスペース×広告のマッチングサービス「MACHISUPE(マチスペ)」PR。

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