新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、より一層「健康意識」への関心が高まっている中で、日本に古くから根付き、自然由来の原料で、1人ひとりの体質にアプローチを行う「漢方」に興味を持つ方も増えているのではないでしょうか?

今回は薬剤師・鍼灸師でもあり、鍼灸院・漢方専門店・薬膳八百屋を経営されている、合同会社 漢満堂 代表の青木満さんに【漢方・鍼灸・食養生について】をテーマにお話を伺いました。

漢方との出会い、薬剤師らしくない異色の経歴の原点とは?

ーー青木さんは、薬剤師・鍼灸師・薬膳八百屋の経営など、多岐に渡って活動されていますが、薬剤師を目指したり、漢方・鍼灸に興味を持ったきっかけをお伺いできますか?

元々は研究に興味があり、薬学部へ入学を決意しました。入学当初はどちらかというと「漢方なんて怪しい」と思っていたタイプでしたが、頭痛がひどい時に試しに漢方薬を飲んだらものすごく効いて驚いたんです。それから漢方への興味が深まり、漢方の研究をしようとなったんです。師匠の元へ通ったり、様々な勉強会へ行ったりしました。漢方の研究をするにはプロの治療家になる必要があると感じ、薬学部卒業後と同時に鍼灸学校へ入学し、鍼灸学校卒業後すぐに開業しました。

今思えば、薬学部入学当時は、将来まさか自分が八百屋をやるだなんて全く思っていなかったですね。

ーー漢方専門店や鍼灸院以外に、「薬膳八百屋」も始めるには、正直かなり勇気がいるのではないでしょうか?

本来なら漢方薬を売った方が経営的には良いのですが、漢方を学んでいると端々に食事や生活習慣の大事さが書かれているんですね。現代病のほとんどが、生活習慣病なので、実際に漢方薬を使わなくても、例えば食事を改善するだけで治るケースも多いです。そして、その方が患者さんのためにもなると思っているので、儲からないけど八百屋をやっています!笑

青木さんが経営されている、田園調布の薬膳八百屋「ファルマルシェ」の外観

現代医療にはない、漢方や鍼灸の魅力

ーー近年、若い世代の方でも漢方などの東洋医学に興味を持つ方が増えている印象を受けますが、青木さんが思う「漢方や鍼灸の魅力」はどういった部分でしょうか?

同じ病名でも患者によってアプローチが変わるので、西洋医学のようにマニュアル化するのは難しいですが、草木の根っこなどを組み合わせて様々な疾患を治せるのはすごいと思います!

もちろん、時には想像通りにいかないこともありますが、保険治療と異なり、自費での漢方治療だと患者様側も結果に対してシビアなので、絶対治すつもりで真剣に取り組みますし、私では治せないと思ったら安易に受けないように心がけています。

もちろん現代の西洋医学にも優れている部分もあるので、全否定ではないですし、そもそも伝統医療と西洋医学の良さは違うので、それぞれの良いとこ取りができればいいしと考えています。結局どんな治療法であっても、効かなければ意味がないので、治るならば方法はなんでも良いと思います。

ただ、中国の長い歴史の中で数多くの漢方薬が存在しており、日本ではその中のほんの一部しか使われていないことには勿体無さも感じます。

例えばあまりメジャーでない漢方薬の症例として、失恋で落ち込み、ゲップが止まらない患者さんに、気滞を改善する漢方薬を色々と出しても効かなかったことがあります。そこで様々な資料を掘り起こし、「烏梅丸(うばいがん)」という漢方を出したらすぐに良くなりました。

膿が溜まってしまう疾患には西洋医学だと外科的な処置と抗生物質を出すことがほとんどだと思いますが、「托裏消毒飲(たくりしょうどくいん)」と「千金内托散(せんきんないたくさん)」の組み合わせで良かった症例が何件もあります。知人の外科医にも紹介しましたが、病院で扱っている漢方ではないため、やはり使えないんですよね。

日々の食事を見直すことが、一番の治療薬となる

ーー漢方では「一に養生、二に漢方」というように、漢方薬を飲む以外にも、まずは体の土台となる食生活の見直しを大事に考えると思いますが、まずファーストステップとしてどんなことから取り組めば良いでしょうか?

大半の方々が、「○○に良いものありますか?」といった様に、どんどん良いものを足していって、「良いものコレクター」になっているように感じます。しかし、本質は悪いものを辞めることです。まずは何かを足そうとする前に、習慣化している悪いものをやめることが大事ですね。世の中にはもちろん良いものはたくさんありますが、むしろ悪いものを減らしていった方がコストもかからないし、効果も出やすいと思います。

例えば、沼地にどんなに良い木材や大工を入れても、ちゃんとした家は立ちません。まずは土台を整えることが大事です。土台がしっかりしていれば、どんなことがあっても揺るぎにくいし、自分で自分の健康が管理できるようになると、患者さんに伝えています。

結局どんなに良い漢方薬やサプリメント、オーガニック食品を取り入れたとしても、ちゃんと消化・吸収できる土台がないと、体内で活用されません。さらに、自分の体に負担になるものを食べ過ぎていれば、本来の意味でそれは『食べ物』とは言えないと思います。

例えば甘いもの。僕もたまには食べますし、症状がない人にはそこまで強くは言いませんが、アトピーだったり、何かしら症状が出ている人が「甘いもの」や「酸化した油」などを毎日食べるのは、症状を悪化させてしまうので、控えた方が良いでしょう。

あと意外と見落としがちなのは、よく噛んで食べること。「もし急いでいる場合は、急いで噛んで下さい!」と伝えています。笑

「口での咀嚼は消化の第一関門」ですし、スマホやテレビ見ながら食べると、あまり咀嚼せず食べた物がちゃんと消化されないので、今食べていることに集中しましょう。そして何よりも、楽しみながら美味しく食事をすることが大切です。

ーー食生活が大事なのは理解していても、なかなか何かを完全にやめることが難しい方も多いと思いますが、そのような方にはどんなアドバイスをされていますか?

やめるのが難しい場合は、例えば甘いものを食べる代わりに、カカオティーやカカオニブ、ドライフルーツ(棗・龍眼肉など)にしましょうと、「代替案」を提示するようにしています。もちろん食べ過ぎは良くないですが、今までの生活を続けるよりは大きな違いがあると思います。

食事にも運動にも言えることですが、何事もとり過ぎ・やり過ぎはよくないので、ほどほどに、バランスが大事ですね。

薬膳八百屋「ファルマルシェ」では、生産者の顔が見えるこだわりの新鮮野菜やオリジナルの薬膳茶、スパイス類なども豊富に取り扱う。

当たり前だけど見落としがちな、治療や生活上での心掛け

ーー色々なこだわりがあるかとは思いますが、普段の治療ではどういったことを心掛けて治療に臨んでいますか?

どんな病気でも必ずきっかけがあるので、「この人がこの病気になったトリガー(きっかけ)は何か?」を突き止めることですね。そこでどの方法が良いかを考え、漢方薬を出さなくても治る場合は、漢方薬は出しません。また、トリガーが治せなければ、絶対に病気は治せないので、それはちゃんと伝えます。

例えば、ものすごく仕事が忙しいのが原因な場合、仕事を辞めろとは言えないし、本人も簡単に辞められないと思うので、そういう場合は対処法をアドバイスしたり、必要に応じて漢方を出しています。

ただ、患者側としては不調があれば漢方薬を飲みたいし、鍼を刺して欲しいし、モノに対してお金を払うことに慣れているんですね。ただその希望に応えること、「それが本当に医療なのか?」と問われるとそうではない場合も多く、個人的には「なるべく治療しないのが、本当の意味での治療」だと思っています。

それこそ漢方治療の古典「傷寒論」「黄帝内経」などを通して、「薬は飲めば効くのではなく、効くようにして飲むのが大事」というメッセージを私は受け取りました。いかに効くような飲み方ができるか、どうすれば薬がなくても良くなるのかは、医療者側のアドバイス(服薬指導)にもかかっています。しかし、残念ながらそこまでしっかりと指導できている医療者は少ないのではないでしょうか?

ーー全国の医療者の方々皆さんにぜひ届けたいメッセージですね!ちなみに、健康分野のプロとして、プライベートでは健康のためにどんなことを気を付けていらっしゃいますか?

僕は毎日漢方薬を飲んでいるわけでもないし、毎日ものすごく食事に気をつけているわけではないけれど、バランスを大事にしています。

あらゆる伝統医療はバランスを取るための治療なので、例えば今日ケーキを食べたとしたら運動する。ストレスが溜まったら、ストレス発散するために温泉へ行ったり人と会う。運動不足だと思ったら運動する。野菜不足だと思ったら野菜をたくさんとる。何か特別なことをするというよりも、当たり前のことを大切にしています。

あとは、風邪の引き始めだなと思ったら葛根湯を飲んだり、体のちょっとした変化を感じ取れるようになること。

どんなに八百屋の経営が大変でも、楽しく、前向きに過ごすこと。結構「自分なんてだめだ」というような自己否定派の人は多いので、自分で自分自身を褒めたり、「自分の信念に従ってやっているからそれでいい」というような自己肯定感は大切だと思っています。

ーー最近でこそ「マインドフルネス」が注目されていますが、現代は情報が溢れ過ぎていて、自分の感覚になかなか気付きにくく無理してしまったり、SNSなどで他人と比較してしまいがちな方も多いと思うので、大事な観点ですね。

今は情報が多すぎて、薬や医療に関しても、自分自身に関しても、大事なことを掴めていないと感じます。取捨選択力や自分を知ることは、現代人にとっての必須スキルでしょうね。

「漢方のプロ」が目指す、今後のビジョン・使命とは?

ーー薬剤師・鍼灸師という枠を超えて、幅広く活躍される青木さんですが、今後掲げているビジョンや使命などはありますか?

漢満堂のミッションは、「医療からの自律をサポートすること」です。漢方薬に執着しているわけではないので、それ以外にも良いものがあれば伝えていきたいし、患者さんが本当の意味で治れば手段は何でも良い。

ただ、現在の日本の医療は薬を売っていた方が利益になるので、いくら素晴らしい志を持っていたとしても、まだそういったビジネスモデルは少なく、やったとしても打ちのめされる方も多いのが現実です。

私もまだまだ試行錯誤を重ねている段階ですが、患者さんの「医療からの自律」はもちろんのこと、自分自身や社員がそれでご飯を食べていけるようなモデルケースを作っていければと思っています。将来的には、八百屋、漢方薬局、レストラン、鍼灸治療を融合した店舗の展開もできれば最高ですね!

定期的に勉強会やマニアックなイベントも開催しているので、詳しくは「漢満堂」HPをご確認下さい!

※こちらの記事は、2022年1月19日に開催したインスタライブを元に執筆しております。アーカイブはこちらよりご覧頂けます。

PROFILE
青木満(Mitsuru Aoki)
薬剤師、鍼灸師、合同会社 漢満堂 代表
一般社団法人 大田区鍼灸マッサージ師会 会長
一般社団法人 枇杷葉温圧灸協会 会長
一般社団法人 薬膳酒・薬酒協会 理事
一般社団法人 日本温活協会 理事

薬学生時代より漢方治療の権威、漢方薬局「平和堂」根本幸夫氏に師事する。
10年間に亘り漢方治療の本質とその運用方法を学び、漢方薬局と調剤薬局両方の経験を通して、薬に依存しがちな現代医療に疑問を抱きく。
2011年より「カラダの声を聴く」というスローガンの元、薬に依存しない独自の医療システムを構築。
現在、オーダーメイド治療をはじめ、薬膳八百屋ファルマルシェ、監修や各種セミナーの開催など、健康に関わる様々な啓蒙活動をしている。

合同会社 漢満堂 Web site:http://kanmitsudo.com/
薬膳八百屋ファルマルシェ Web site:https://www.pharmarche.com/
Instagram:https://www.instagram.com/pharmarche/

合同会社 漢満堂 – 合同会社 漢満堂
医療からの自立を加速する
kanmitsudo.com
この記事を書いた人
佐々木 貴美
薬に頼りすぎず、漢方・ハーブ・アロマなどの自然療法、予防医学、栄養学、美容などもバランス良く取り入れ、「体の内側から健康で美しく、ハッピーに」をコンセプトに発信する、ホリスティック薬剤師。W holistic pharmacy顧問。「オンライン優しい漢方」漢方薬剤師。電子書籍「健康美を手に入れて自分を輝かせるための15の処方箋」著者。デッドスペース×広告のマッチングサービス「MACHISUPE(マチスペ)」PR。

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